大山自然に還る森

はじめに

サステナブル大山の「大山の森づくり」プロジェクトは、オオサンショウウオをはじめすべての生物のために、地域の森林の健康を高めることを目的としています。スギやヒノキの植林地を伐採して間引きし、代わりに自生の落葉樹を混ぜて植林します。また、シカなどの食害から苗木を守るために、伐採木で作られたツリーガードを設置します。

地元の職人、製材所、林業団体、土地所有者と協力し、木材を利用してオリジナル製品を作ったり販売したりして、NPOと土地所有者が合意した割合で、土地所有者とサステナブル大山NPOが収益を分担します。木材の採取や輸送にかかる費用は、木材の販売やオリジナル製品の販売で回収します。

NPO法人サステナブル大山は、大山・名和川流域に生息するオオサンショウウオとその特異な生息環境を守ることを基本理念としています。そのためには、川や森、農地、集落など、山全体の生態系を考える必要があります。

日本では集中豪雨の問題が深刻化しており、2021年8月には西日本から東日本にかけて記録的な大雨に見舞われました。日本の水路に生息する最大級の両生類であるオオサンショウウオにとって、このような豪雨は特に危険です。多くは濁流で下流に流され、その結果、水中の瓦礫や岩、コンクリートの河川補強材などにぶつかり、怪我や死亡するケースが多いです。生き残ったオオサンショウウオも、堰やダムなどの人工的な障害物によって、ほぼすべてが遡上できなくなります。サステナブル大山は鳥取県と協力して、オオサンショウウオが自由に川を遡上できるようなバイパススロープを設置することを第一の目標としていますが、大山町の森の健康、種の多様性、生物多様性を回復させることも不可欠な課題であると考えています。

混交林は針葉樹林に比べて水を多く蓄えることができるため、集中豪雨や台風の際に河川に流入する雨量を減らし、遅らせることができます。また、一般的に混交林は生物多様性が高く、食物連鎖の上から下まであらゆる種類の野生生物にとって有益であると言われています。

専門家によるアドバイスとサポート

2022年の始めに、鳥取環境大学の根本教授のもとへ伺いました。教授は森林資源管理学を専門とされている方で、私たちのプロジェクトに快くアドバイスをしてくださいました。 https://youtu.be/BmJPuuRZK-Y

初期植栽地 - 大山町二本松「アンフィールドの森」」

アンフィールドの森は、スギを主とした約15,000㎡の植林地です。約50年前に植林され、その後はほとんど管理されていません。植林地の周辺には、大きくて立派なスギの木が何本かあります。しかし、内部はかなり暗く、木は細く、小さく、中にはすでに枯れているものもあります。森までのアクセスは簡単で、森の中で小さな小川が始まり、やがて支川に合流します。 根本教授の助言のもと、植林地の中央から数本の木を取り除き、この地域に自生する適切な落葉樹の苗木に植え替える予定です。

寄付と後援による苗木の植樹による「自然再生」プログラム

サステナブル大山では、旅行会社と連携し、旅行会社のお客様一人ひとりに落葉樹の苗木を植えていただくことで、持続可能な旅の実現に貢献することを目指しています。このプロジェクトは、旅行先の環境保全に役立つだけでなく、日本や世界で最も重要かつユニークな動物であるオオサンショウウオの保護に直接貢献できる点が特徴です。

今後、提携旅行会社のお客様にも現地にお越しいただき、植樹していただく機会を設ける予定です。

スギとヒノキの人工林の問題点と、なぜ混交林の方が環境に良いと言われるのか?

ここでは、日本各地にあるスギ・ヒノキの人工林をめぐる問題について、基本的なことをまとめました。


1. 人工林のスギ・ヒノキは保水力がほとんどない

日本の低・中海抜地域に生育するブナ、クヌギ、シイなどの樹木の腐葉土は、土の上に腐植を形成しています。この腐葉土が長い年月をかけて山肌に蓄積され、雑木林の斜面は本来、厚いスポンジのような状態になっています。これが天然のスポンジダムとなり、大雨が降っても雨を逃がさないのです。

一方、スギやヒノキなどの針葉樹の葉は油分を多く含むため、落下しても腐葉土にはなりません。

スギやヒノキを植えた人工林では、腐葉土が雨水を保持できないため、雨水の大部分はそのまま川に流れ込んでしまうのです。

2. スギやヒノキは根が浅く、地盤を弱める。

ミズナラ、クヌギ、ブナなどの広葉樹の根は、地中深くまで伸びています。一方、スギやヒノキなどの針葉樹の根は水平に広がる性質があります。そのため、スギやヒノキなどの針葉樹の人工林は、広葉樹の自然林に比べて地盤が弱く、大雨が降ると土砂崩れや地滑りが起こりやすいのです。

最近、集中豪雨による土砂崩れの映像をよくテレビで見かけるようになりました。そのほとんどが、スギやヒノキを植林した人工林で発生しています。


3. 針葉樹の人工林は "野生動物のデッドゾーン"

人工林に足を踏み入れると、不気味なほど静かであることに気がつくかと思います。これは、一般的に針葉樹林は生物多様性に乏しいと言われているからです。要因としては土壌の酸性度、腐植の欠如、果実や木の実の不足など様々です。その結果、イノシシやシカ、ニホンザル、クマなどの有害動物が食べ物を求めて農地に侵入し、人間との争いを起こすことが多くなっています。落葉混交林のような生物多様性のある地域では、動物たちの食物が豊富にあるため穀物や人間の土地への被害が発生しにくいのです。

なぜ日本では針葉樹のみによる植林が多いのか? 

第二次世界大戦で日本の戦況が悪化すると、燃料不足が深刻化し、薪や炭を確保するために全国の山で広大な森林が伐採されました。 

戦後復興の一環として、「植えて育てる」を合言葉に、裸になった全国の山にスギやヒノキの苗木が植えられました。木材として輸出するためのスギ・ヒノキを大量に植えて外貨を稼ぎ、戦後復興に必要な建材を確保するのが目的でした。苗木は無料で手に入り、市民は植えることでお金をもらうことができました。その結果、「植林狂乱」と呼ばれ、多くの植林地が放棄されたり、管理が行き届かなくなってしまったのです。

 寄付

皆さんの寄付によって、オオサンショウウオの保護・保全活動を行うことができます。詳細については、「オオサンショウウオを救おうキャンペーンページをご覧ください。